好きなことを、好きな分だけ。

世界一面白い日記書く人です。どんな名文よりもすばらしい駄文を書くために、日々精進しています。

嵐の二宮和也にしてください。

200914「嵐の二宮和也にしてください。」

 

「嵐の二宮和也にしてください。」

俺は美容室で席に着くなり、凛とした表情でこう言った。

 

俺は今日美容室にいく。みんなの好きな髪型を教えてほしい。

美容室に行く前にとった配信は女性リスナーしかいなかったので、面白半分で聞いてみた。やはりモテる髪型を知りたいならば、流行に敏感な女性諸君の生の声を聴くのが一番である。俺の選択は間違ってなかった。そう、間違ってなかったはずである。

それなのに、得られた回答は「坊主」「亀頭ヘアー」「リーゼント」「男のことは分からん」…。ああもう!!お前らは最高にかわいいやつらだ!!

しかし、こんな俺でも今はやりの髪型は知っている。今はやりの髪型とは、いわゆるマッシュというやつである。


まあ、マッシュといってもいろいろあるが、横と後ろを長めに刈り上げて、それ以外の髪を流したやつである。細かい定義が知りたければ各々調べるように。

俺は美大生の一件以来ファッションに気を遣い始めているので、そろそろこの「マッシュ・ビックウェーブ」に乗ってもいいのでは?と思い始めてきた。

しかし、この波に乗るには少し問題がある。マッシュと検索して出てくる参考画像のモデル、総じてイケメンなのである。こんな髪型、お世辞にもイケメンとは言えない俺に似合うのか、心配にならざるをえない。

そういった考えを経て、結局美容師の裁量に任せるのが一番ではないかと思い始めた。お任せ――すなわち「お前の今まで培ったすべての技術を俺の頭にぶつけてみろ」という意思表示、それこそ美容師の魂に火をつけ、俺の髪型を最高の状態にしてくれるのではないかと考えたのだ。

そうだ、それでいこう。お任せしか勝たん。そう思い始めていた矢先、こんなコメントが飛んできた。「お任せとかいう中途半端な奴が一番カモにされやすい。知識ないだろうから良いように言いくるめて、客は『そうなんだー』ってそれに乗っかって、美容師は『カモだ』ってなるし、客は客でこなれ感出す。」

お任せすら言えないのかこの世の中は!!いつからこんなに自主性を重んじられる社会になってんだよ!!つか、カモってなんだよ。

美容院予約30分前。追い詰められていく俺。きりきりと痛む胃。刻々と進む秒針。俺はどうすればいいのか。

リスナー「お前にできることは、写真を見せてこれにしてくださいということ。」

その助言に従っていろいろなモデルを検討したところ、二宮和也の髪型にしようという流れになってしまった。俺だって抵抗したよ。え?俺みたいな田舎侍が二宮和也になっちゃっていいんですか?って感じだからな。

やれんのか!!やれんのか俺!!

美容院で「嵐の二宮和也にしてください」は誰だって恥ずかしいと思うが、俺は覚悟した。この19文字、重いよなあ…。

 

その後俺は美容院に入った。

俺の行きつけの美容院はなかなかいい美容院で、学生街にあるくせに高級感があって、値段が少々お高い。俺のような社会のはぐれ者とは一切交わらないはずのタイプの散髪屋ではあるが、背伸びして通ってしまっている。普段、美容師も客もみんなイカしていて、店内でも俺は排斥されているような気分を味わうことになる。美容院が社会の縮図のようになってしまって、美容院にいる間は俺一人が社会全体の影を背負うことになる。

しかし今回は勝手が違った。今日は服装をよれたTシャツなんぞではなく、きっちりおしゃれしていった。見かけだけは陽キャの殻をぶっていたせいか、やたら美容師に話しかけられた。あるいは、いつものまぶしい世界におびえた瞳ではなく、「絶対に二宮和也になって帰ってやる」という覚悟で燃えた瞳になっていたからかもしれない。とにかく今回は無言の美容師ではなく、積極性があった。

「嵐の二宮和也にしてください。今回はイメチェンしたいんです。」

美容師は非常に困ったような顔をしていた。二宮和也ヘアーは今の俺とほとんど長さが変わらず、大したイメチェンにはならないという。店員はいう。

「結局のところ、あるところでは短め、あるところでは長めという緩急をつけないと、イメチェンにはならないんですよ」

「じゃあ、どんな髪型がいいんですかね」

「うーん、最近の流行りならマッシュとか」

「任せます」

お任せしか勝たん。そして、俺は今はやりのマッシュに乗っかることになった。

 

今回は髪を切ってもらっている間に雑談していた。店員は話しかけてくる。

「イメチェンしたくなるようなことがなにかあったんですか?」

「いやあ、女の子に振られてしまったんですよねえ」

「へえ、なんでなんですかー?^^」

それ分かったら苦労しとらんわい!!そう言いたくなる衝動をぐっとこらえて「本当に、なんでなんですかねえ…。」と絞り出した。

これだから美容師は恐ろしい。

美容師「彼女とかいますか?」

客「死にました…。」

美容師「なんで死んだんですかー? ^^」

とか平然と言ってきそうな恐ろしさがある。

こうしてカットは無事(?)終わり、店を出た。

 

最後におまけとして俺と研究者の先輩・塚本さんとの散髪後のやり取りを貼っておく。では、おやすみなさい。

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